井上ジェットです。(
@jetinoue)
クリエイターの立場で映画の感想を書くのはリスクはあるけれどゴジラは面白かったし映画は好きなので感想と分析書きます!途中までは興行成績のことをメインに書いているのでネタバレはないつもりです。途中でネタバレのアナウンスを入れています。
夏の東宝映画は「シン・ゴジラ」と「劇場ポケモン」の2本立て。ポケモンGOの割に映画ポケモンは苦戦しており東宝の首脳陣はお怒り?かもしれない。ポケモンGOは大流行りなのだが、代償行為となって映画の成績を落としているのではないか。
そしてゴジラ。あれだけ大勢の俳優を起用しているにもかかわらず、かろうじてランキング1位にはなったものの、1週(約8日)で動員100万人とは、ヒットの中でも「スマッシュヒット」という単語がつく範囲かも。おいおい、聞いてないよ。と、東宝は言っているかもしれない。庵野さんが「全部ジャッジできるならやる」みたいな条件だったのかもしれない。だってCMからなにからいつもと違うもの。事前のCMが面白くなかったのは、本編を見たときの衝撃を強くするためであったと感じ、その効果は奏していて、本編は見事に見どころがあった(ここでべた褒めすると、ハードルが上がるので楽しんでもらうためにべた褒めを控えておく)。内容は楽しかったが、しかし、成績は本当に大ヒットなのか?というのはある。
●シン・ゴジラを興行面からと、一週経過をして、一体シン・ゴジラとはどういう映画なのかを井上ジェット流に分析します。そして隠された裏テーマとは!?
日本映画の帝王、東宝としては、この夏の映画の出だしは、机を叩くレベルだとしたら、改善方法はあったのかというところ。今年の夏は話題作が多くそもそも激戦。内容面も含めて後述してみますが、これから、どのように成績が推移するのかが、ゴジラの興収は全力で見どころなのです!
それはなぜか。
春先には、ズートピアが宣伝を失敗して出だしは失速だったものの、第2週目でランキングを上昇させて、公開日よりも興収が上がってゆくというミラクル現象があったのです。映画の興収は公開日から右肩下がりになってゆくものですが、ズートピアは内容のクオリティや、二次元層がファンアートを描き出したことなどでターゲット層が広がって成績が上がって行きました。やっぱりメジャースタジオが内容が良いものを作れば伝わりますね。よくわからない新しいものでも、バイラル(口コミ)で映画の成績に影響がでるようになってきたのだ。いい流れです!
シン・ゴジラにも似たような空気を感じるものがあります。ゴジラ映画は、一体どういう層が見ているものでしょうか。私の大好きな同職のSF映画大好きオジサンは、USゴジラも楽しみに見ていて今回も楽しんで見ておりました。ゴジラファンは50代以上の年齢層であるという考え方もあるわけです。
北村龍平監督などが一時期、ゴジラをファイナルにさせたわけで、インディー映画系の学生や若手へ観客層を広げる作戦が行われたわけですが、うまく行かなかった。そして庵野先生です。庵野的ゴジラの見せ方は、今作シン・ゴジラで若手への影響を作り出せているでしょう。今の成績だとまだアーリーアダプターの域です、しかしギャズムを越えかかっている感じがする。もう少しだ!というところ。応援隊の出動タイミングだ、いけいけ!
エヴァンゲリオンの劇場版は僕も含めてファンの方には大ヒットのイメージがあるし、上映した劇場単館はスクリーンにおける売上は高いわけですから劇場は大歓迎な作品ではありますが、メーカー的位置からみた興収は全体で20億円規模の作品がエヴァなんです。50%が配給バックで、さらにその50%がメーカー(製作)へバックされるとしたら映画の上映だけで見れば5億円規模。もちろん大ヒットですが、超ヒットという感じではない。
自分もエヴァ大好きであるが、庵野さんが頭を抱えるのは、超ヒットの域になぜエヴァがいかないのか、というところごあるのかもしれない。(ちなみに私は庵野監督とお会いしたことがないので、ファンの推測の域です。)
しかしエヴァは映画よりグッズなどが大きな商売になっていることがわかります。聞くところによるとエヴァが上映されると、映画館によってはエヴァグッズだけの売上が、単館だけで数千万円になるとか。
今回のシン・ゴジラはアニメじゃない。実写だ。売れる商品は、ゴジラだけ。少ない!グッズが展開できない。エヴァVSゴジラグッズ出していい?いいよね?ってなったのか。
あー心配。ヒットしますよね?しますよね?ってなりますね。
竹野内豊グッズを、キーホルダーみたいにして売るわけにも行かない。どうしようもできない。
日本の劇場映画の観客の比率は女性が多いのです。映画館に行く人数は年間1億6000万人。うち60%が女性客。シン・ゴジラは男性客のほうが多いという噂ですから、消えてしまった需要を取り戻そうという作戦ならば、期待ができる状態になっているわけです。
でも、はたして男子が映画館でウホーイ!ガオー!と雄叫びをあげて、ゴジラを楽しめるかというと、トークテーマを共有できる場がないのです。その場があったなら、もっと映画はヒットできる。クリエイター界隈では私を含めて、異常な盛り上がりをしているわけですが、シン・ゴジラのスタッフロールを見ればわかるように、CGクリエイター祭りになってます。こりゃ、楽しいですよ。ゴジラ級のクリエイターがドリームチームのように作品作ってますからね。最高に楽しいし、面白いです。
このタイミングに乗じて、ぜひ、クリエイターをヒーロー化してもらうことです。クールジャパン今だぞ。もうね、ドル箱ですよ。クリエイター力すごいんですから、世界で成功させられますよ。やったらいいぞ。
さてさて日本映画の成績に着目することに戻りますと、男子の客ははどこへ行ったの?ということになりますが、先日地下アイドル劇場へ久々に突入してアイドルの卵たちのライブを見ていたら、ああ、ここにいた。となりました。
男子はアイドルを見に行っちゃっているんだなあって思いましたね。つまり、アイドルはゴジラだったわけです。ラブライブなどもヒットしており、男性客は消えてはいないのです。
東宝は、キャスティングに口出ししたでしょうか。もしも今回のシン・ゴジラのキャストの半分か1/4くらいでも、アイドルを投入して、モスラーや、モスラー、と歌を歌っていたりしたら(またそれも別物すぎて良い例えではありませんが)ベクトルの違うオタクたちも集まれる作品にもっとなっていたかもしれません。男子が集まる場所、トークテーマを共有できる環境があると、男子客がもっとしゃしゃり出ることができるかもしれないとわかりますね。キャスティングを俗に言う『俳優』に固めすぎずに、どういう人を出演させるかが単純に『映画興収だけ』を見ると影響があったかもしれません。
●2015年の、映画興行成績の、邦画のトップ3を知ってますか?アニメと洋画を除いた、実写邦画です。
●2015年実写邦画興行ランキング
邦画1位 HERO(木村拓哉)
邦画2位 実写版、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN(樋口真嗣)
邦画3位 映画 ビリギャル
です。樋口監督、2015年。邦画2位ですからね。『話題作』でした!
日本の邦画が、この状態ですから、そういう意味でも、シン・ゴジラは、何を起こすかわからんぞ!状態の期待作にされたわけですよ。最新映画の『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』も劇場で見てきたのですが、こちらもすごかったんです。邦画でかなりの予算(前作は150億円)をかけているという、スクウェア・エニックスでしかできないけれど、邦画でハリウッド予算をやっているという誇らしい映画です。こちらも、冗談抜きですごく面白かった。このゴジラとFFは、日本の映画がマーケケットにクリティカルアタックをしていると言っていい。ホノルル版映画FFは、もったいなかった、という感想ではあるが、今回のFF劇場版はすごかったといえる。
ここからだぞ邦画!
そしてここからはネタバレがあります。
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シン・ゴジラと、KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XVと、共通して物足りなかったものがあります。そう、それぞれがかなり傑作でしたが、物足りなかったものがあるんです。それは・・・あくまで僕の主観です。
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それは
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愛と恋とシャワーシーン&キスシーンです。
漫画のドラゴンボール→ブルマは服を脱ぎます。2015年日本興収ランキング1位のジュラシックワールド(恐竜映画)は、キスシーンがあり、子供も活躍します。愛もある。シャワーシーンと、裸シーンがなくても、恋がなくても、愛は大事なんです。興収や成績を見て、万人向けに作るならばそういうことなんですが。
女子の観客の一部では、長谷川博己さんが匂いを指摘されたとき、当然シャワーシーンが来ると思ったとか思わなかったとか。個人的には石原さとみさんが風雨にまみれながれ避難してから着替えのシーンがあって次の現場へ。みたいなシーンが欲しかったわけです。
でもですよ。
なんで、人類はゴジラを自衛隊や重機、在来線まで使って攻撃をしたかってことです。海の中から現れて、地上を歩きだしたばかりの子を、邪魔だ邪魔だと、政府は重要な議会承認を経て、排除しようとしているわけです。しかも都合よく東京湾や相模湾から出てくるわけです。汐留(でしたか?)らしきあたりをボッコボコ。日本死ねー!のごとく。どこから出てくるかはわからない、しかしゴジラがボコボコに破壊してくれる。最高!そして、それを官僚がどうにかしようとする、今できあがっている日本の仕組みで、しかもかれらは、国の中枢の人たちだけで判断してやろうとする。最後にゴジラを止めたのは、在来線と重機。
日本は災害の国であり、昔からゴジラは、台風や地震のような災害の一種だと言われていましたが、今作は、そのようには見えないところもあり。ぼくら国民の怒りのようでもありました。
映画の節々から、口には出しにくい世の中へのアンチテーゼか、世の中の仕組みに向き合うことの重さと怒りを感じたのでした。完全なる社会派作品です。国民一揆映画。
現代社会を利用したメタ的カタルシス!
僕は、シン・ゴジラを見たときに、もちろん初代ゴジラは言わずもがなですが、以下の映画についても、同じ流れを感じると思ったのです。
『
金融腐食列島 呪縛』
『
大魔神』シリーズ
大魔神は、子供の頃テレビでやっているのを見て、怖くなりました。しばらくトラウマでしたね。今作ゴジラもトラウマ感はあります。そういうトラウマを子供の頃にすこしは体験するとことも大事でしょう。
しかし、夏の映画はとくに、親が子供に安心して見せられるものというのがありますから、やはり平和な母親なら見せにくい映画かもしれませんし、ゴジラはファミリー向け映画ではなく大人向け映画だったんだと思います。おじいちゃんたちが、鉄を叩いて重機を作るシーンなんかがあると良かったかもしれないし、サマーウォーズでばあちゃんが各方面に電話をかけまくるみたいな活躍シーンがあってもよかったのかもしれません。
シン・ゴジラは神視点と官僚視点の映画でした。ゴジラはなんのために出てきて、ビームを吐き散らして、街を焼いたのか。使徒の謎は解明が難しいですが、映画や現実も、ものごとの全部をわかろうとすることは難しく、目の前のものにどう向き合うのかというのは碇シンジくんの持っているテーマと同じですね。庵野作品には、そのテーマが脈脈と受け継がれているのでしょう。自分も大人になって(大人になってからしばらくかかった)、責任に向き合うことを理解してきました。責任放棄ジャパンから、向き合いことへ映画がひとつのきっかけになると、制作者冥利につきるのだと思います。
続編があるっぽく、あれが出るかも、これが出るかもと、あらゆる可能性を想像するという楽しみを感じられて、やはり面白かったなあと思えるのです。
長らくありがとうございます。
井上ジェット
宇宙大戦争の曲も最高に良かったですよ。
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