一見すごくニッチに見える『魔法少女まどか☆マギカ』の企画の謎を解く



どうも井上ジェット(@jetinoue)です。
魔法少女まどか☆マギカは結果的に大ヒットアニメとなっています。虚淵玄さんが書かれてシャフトさんがアニメにしているということでヒット間違いないでしょ。と考える人もいると思いるでしょう。あまりにも完璧な「魔法少女まどか☆マギカ」のTVシリーズのストーリ構成。シリーズが1クールで終わりにもかかわらずその後のTVシリーズは制作されず劇場だけ。ブランドイメージを維持するために、物語を膨らましてしまう新作TVはリスキーで、劇場版だけならば作品のコントロールがビジネス面を含めてもしやすいのだろうと考えられます。
しかし企画素体を見てみると、一体どこのお客さんが喜ぶ顔をするものなのかが、なかなか見えない。

ブログタイトル【魔法少女まどか☆マギカの企画の謎】というのは、この企画がなぜできたのかという意図をひも解きたかったのです。

『魔法少女ものをやりたい』
『アニメファン向けにしたい』


という2つのポイントが企画初期にあったのかなと思います。今となってはヒット作品ですが1クール作品、こんなに当たるとは思っていなかったのではないでしょうか。脚本の完成度たるや、虚淵さんは自信を持っていたに違いないです。しかし…

【すごくニッチに見える】

(1)魔法少女ものなのに、子ども向け作品ではない。
(2)少女たちが主人公なのに、太ももをあらわにしたり、胸をゆらしたり(google的に言う)性的ほのめかしなどがない。
(3)お友達が死んだり、重い運命を背負っていたりする。

一体、誰向けなのか。結果論なしに作品を分析しようとすると、こう感じます。
しかしストーリーラインは言わずもがなよくできています。
「ワルプルギスの夜が来る」という大きなセントラルクエッションが設けられていて、「魔法少女になるかどうか」「願い事が何か」という主人公たちの主観的なテーマ性も出ています。ストーリーラインは完璧ですよね。ほむらがなぜまどかを助けるのかという謎もすごく良くできていて、ちゃんと最後まで考えて、最初を作っているのがいいですよね。
「一つしかできない願い事を叶えることができるとしたら何か?」みたいのはよく考えれば理屈っぽく、1契約=1願いで人生決定的。そんなの、完全にマンガ脳です。世界がそういう風に見えている人口が18万人くらいいるというマーケットの数字なのだと思いますし、ニトロプラスさんがそういうマーケットを的確に掴んできてお仕事を続けているからこそ計り知れる数字なのだと感じます。

この「しっかりしたストーリーをやりたい」。ということだったとして、題材は魔法少女ということは、数々のアイデアのパーツが、いつしか結びついた形なのだろうと思いますがこの上質なバランスのストーリーを何で表現したらいいのか、時かけのようなタイムリープものにするのか、なんだろうなんだろうと考えて行った時に、魔法少女という落とし込み方に行き着いたのだろうと思います。魔女はかつて魔法少女であるという設定や、パラレルワールドというある種ハイコンテクストなSF単語を使わずに結果的に、そのぞっとする世界観の広がりを感じさせるという、SFホラー的なテイストも入れることに成功しているわけです。こんなすごい表現ができているわけ。

こう考えるとどんな企画なの?というところで、すっごくカッコイイ、XMENみたいなイケメン&美女軍団アニメになりそうなところですが、そうじゃない。四角い顔のロリータ・ファッション系6頭身少女。車椅子に座ったハゲたオッサンが、みなを翻弄させるのかと思ったら、プロフェッサーXじゃなくて白いキツネみたいなやつがペラペラテレパシーをつかって、エントロピーとか喋っちゃう。これは日本文化のいうところのキツネ様がどこかにあるように感じます。企画書にはなんて書いてあったのでしょう。「全宇宙のエントロピーを操作する使命を持つ地球外生命体の白いキツネ、キュゥべえ」とか書かれていたのでしょうか。ちなみにウィキペディアにはキュウべえができる顛末が書かれていますね。このハイコンテクストなストーリー性をもっとも理解したがるのは、IQレベルの高い社会人中間オタク層→少女ビジュアルであり、苦労キャラという設定にいきついたのだと思います。ここまで見ると、その層のお客さんの喜んでいる顔が思い浮かびます。ひえーすごい。

もはや言わずもがなですが、作品が本質的によくできていて、ストーリーとビジュアル設計のバランスは挑戦的しかし良く調和するまで練られている。監督の作品見せ方もよく考えられていてバランスが良いですよね。

ちなみに私が分析するヒットの法則の一つに、「特異的ヒット作品には、形状把握が困難な敵が出てくる」というのがあります。これは例えば、マクロスの敵軍だったり、エヴァの使徒であったり、まどか☆マギカであったり。形状がよくわからないやつは、敵の存在を視覚的記憶しないので、主人公側にフォーカスが集中する。という理屈です。エヴァンゲリオンに関しては形状がわかりやすいやつもいますが、だいたいよくわからない形状してますよね。初期の宇宙刑事ギャバンなども、魔空空間とかに連れ込まれてよくわからない状態にさせられます。そのときに安心できるのは見慣れて心の拠り所となる、主人公の偶像だけというのがあります。
 最近、この形状把握できない現象を利用したものに、ふなっしーがあります。ふなっしーの場合、形状把握が困難でしたが、だんだん把握できるという、ビジュアル理解的カタルシスを単体で形成しているという異常な現象が発生していて、おどろきました。彼は一種、大仏様的なアプローチに近いと思います。馴染んでくると、みんな拝むんです。

ここまで書いて、魔法少女まどか☆マギカのすごさは、やっぱりすごいとわかるのですが、マーチャンダイズの視点で見ると、商品化しにくい作品には見えます。だからやっぱりアニメ業界的にはすごいですが、任天堂のマリオとかに比べると、やはりニッチ層へ向けている作品ともいえますが、ニッチ層の需要をここまでガッツリつかむクオリティを出しているというのはシャフトさんやニトロプラスさんの経験と技です。すごいです。だからやっぱり、虚淵×シャフト路線で、新しいの1クールやるか。ということで、やってみるか。としてやってみたことなのだろうと思いました。

ここには添付しませんが、まどか☆マギカの、マーチャンダイズやマルチメディア展開のマイルストーンを時系列に分析した資料をまとめたのですが、まどか☆マギカは、TV放送が終わった後から様々なマルチメディア展開が始まったことがわかっていて、TVアニメと同時展開のものは比較的に少ない作品です。そうすると、オリジナルIPというものの認知が、対象のマーケットに対して、イノベーター理論的に、アーリーマジョリティー(50%)からレイトマジョリティー(84%)あたりに浸透するにはTVアニメという作品発表の仕方をしても1年くらいはかかるということがわかります。なるほどと思いますね。

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その他の記事

◆映画「おもひでぽろぽろ」はナゼ面白いか。分析をしてみた。完全分析。
http://jetinoue.jugem.jp/?eid=203

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ホラー、スリラー、サイコ、サスペンスのジャンルの違い

どうも井上ジェット(@jetinoue)です。
前回のエントリーでは「ヒット作となりうる作品タイトルのつけかた」について書きまして、最近は連日、映画や物語作りについての豆知識をブログに乗せていますが、今日は「ホラー、スリラー、サイコ、サスペンスのジャンルの違い」について書いてみたいと思います。そのうち本にまとめましょうか。

●「ホラー、スリラー、サイコ、サスペンスのジャンルの違い」

日本では、映画のジャンルなどの呼び方を、プロモーションの効果が高いように都合よく使う場合がありますが、ジャンルを正確に把握すると作品の企画そのものの要素を洗い出せます。今回は、ホラー、スリラー、サスペンスの違いについて井上ジェットの知る知識でまとめてみます。主に自分用メモですので寛容な方だけ見てください。

■ホラー
・・・未知の存在や、身近ではない殺人鬼などが、主人公などに恐怖をあたえるものをいいます。それは主に人間ではないことが多い。(「リング」、「13日の金曜日」、等)

■スリラー
・・・身近にあるものや、身近な人が、恐怖や脅威となり、主人公などを脅かすものをいいます。それは主に人間である場合が多いです。(「ミザリー」、「ルームメイト」、「グラスハウス」等)

■サイコ
・・・サイコとは、狂人がでてくる映画のことをいう。サイコスリラーなどと呼びスリラーと併用されることが多い。サイコサスペンスなどとも併用される。サイコ単体でも使える。身近ではなくとも狂人、ストーカーなどのサイコ人間が出てくるものもサイコのジャンルとなる。サイコは会話が通じない人間キャラクターという感じです。(「羊たちの沈黙」、「ストーカー」、「セブン」、等)

■サスペンス(推理もの)
・・・主に観客が犯人がわからない状態で、それを解明していくジャンルのもの。観客に与える不安や緊張が恐怖に近くなると、ホラーやスリラーになる。謎が解明されないとミステリーになる。(「名探偵コナン」、「金田一少年の事件簿」、等)尚、「刑事コロンボ」のように、最初から犯人がわかっていて、なぜ犯人なのかの謎解きをしていくというものもある。サスペンスではたいてい謎は解かれて作品は結末を迎える。

■ミステリー(推理ものも含む)
・・・謎があるものをいう。探偵や刑事ものもミステリーと言えるし、ホラーなどもミステリーといえるが、ミステリーは解明されない謎が残る場合が多い。またミステリーよりも、ホラーやスリラーのほうが内容が明確で売れるため、ホラーやスリラーのジャンルを使用することがあるといえる。「X-file」や「都市伝説系」はミステリーといえる。怪談話は、ミステリーのものもあるが、人が死ぬ可能性がある話の場合はホラーとなる。そもそも怪談話は「怪談」というジャンルともいえるホラーです。

また、以下ジャンルも細かくある感じです。

■スラッシャー・・・刃物で切り裂く系の殺人が顕著である映画を指す。
■スプラッター・・・血しぶきブシャー!系の表現が顕著な映画を指す。
■ゾンビ・・・ゾンビは、もやは単独のジャンル化している。ゾンビは登場人物の役の一種となりつつあるので、平和なゾンビ映画も最近はあるわけです。

主に自分メモ用ですが参考までです。


■こぼれ話
日本のゲームにおけるジャンルについて。ゲームはその遊び方によって、けっこう明確なジャンルの考え方がありますが、コンシューマー向けのゲームの場合は商品のイメージアップのために都合のよいジャンル名を適当に設定している場合があります。ゲームが複雑化しているために、ゲームのイメージを表したものです。企画書の段階で適当に書いて誤解を招かないよう注意しましょう。

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ヒット作になりえる作品タイトルのつけかた(2)

どうも井上ジェット(@jetinoue)です。
一つ前のブログエントリーで、ヒット作になりえる作品タイトルのつけかた(1)についてひとつコツを紹介しました。今回はその続きです。これは井上ジェットが研究したロジックですので、興味がある方は読んでみてください。


●ヒット作になりえる作品タイトルのつけかた(2)

 ヒット作品となりうるタイトルのつけかたとありますが、やはり作品のヒットは作品の内容にあります。物語や脚本、映画など作品そのものの内容、キャストやキャラクターの魅力。いろいろな要素の良い塵が積もってヒット作となります。その一つの要素がタイトル名といえるのではないでしょうか。
 2つめのコツはキャッチーな単語を使うこと。
 ヒット作となりうるタイトルの付け方の、2つめのメソッドは、タイトルには「キャッチーな単語を使おう」ということです。逆にいうと「地味な響きに注意」ということです。タイトルは単語の組み合わせですから、組み合わせてキャッチーになったりかっこよくなったりすることもあります。理詰めで考えてゆくと、キャッチーさのない、概念的な単語の組み合わせのタイトルになりがちです。「ブレイブファイター」とか「ストロングアドベンチャー」とか「リーダーオブジアース」とかそういうのです。「ザ・ファースト・ブラッド」という作品が「ランボー」というタイトルになってヒットしたという話は少し有名ですよね。そもそも理詰めなタイトルがついてしまうときは、作品そのものにサムシングニュー(何か新しいもの)なものや、個性的な部分を見つけられていない場合に起こり得ま。作品の良いところを肯定して、単語を導き出せると良いですね。
 どうやって、単語を導き出すか。
 どうやって、新しくキャッチーな単語を導き出すか。物語の魅力は主人公がどのように生きているかという部分です。主人公がどんな物語を繰り広げるかに着目するとそういう単語を導き出しやすいでしょう。「スターウォーズ」や「ロードオブザリング」などはパイオニア的なタイトルですが、それぞれ主人公がその境遇にあるということでタイトルと物語の結びつきは強くなっています。また世界観を匂わせて、お客さんを作品へと誘います。「魔法少女まどか☆マギカ」というタイトルも「魔法少女まどか」ではなくて「マギカ」という部分が入っています。これはなぜかということになります。結果論を並べることしかできませんが、ヒット作品のタイトルを見てみると何かしらの新しさ、キャッチーがあるといえます。単語の組み合わせでキャッチーさが生まれるものもありますし、単語を減らすことで新しいキャッチーさになることもあります。すこし単語を変化させることもよくありますね。無数に案だしをして、数日放置して見直してみると、そういう発見につながるかもしれません。

●『座』を取るタイトル名が王者となる。
 さらに3つ目の、ヒット作となりえる作品タイトルのつけかたです。3つ目は「座」を取る作品です。
いきなり問題です。

「巨人」、「テラフォーミング」、「怪獣」

 それぞれ、何を思い浮かべますか?答えに個人差はあると思いますが、「進撃の巨人」、「テラフォーマーズ」、「ゴジラ」or「パシフィックリム」などを思い浮かべませんか。それらの作品は作品の個性を尊重してその座を取った作品といえます。
 「新しい響きで、世間の認知度が高い単語」というのはヒットワードの一つです。新しい単語をもってきても、まだ誰もしらないよなインテリな単語であることもあります。丁度世間の認知が広がってきたときや、長らく忘れられていたイイ響きの単語が作品のモチーフとなっていると、作品は強い関心を持たれます。作品そのものがキャッチーな要素を持っていることで、キャッチーなタイトルは導きやすくなります。タイトルは作品のポテンシャルを匂わせるツールなのです。
 「ムーミン」、「ハリーポッター」、「サラリーマン金太郎」、「ドラえもん」などは、作品の主要人物の名前がタイトルですが、これらもタイトルは主人公に関係があるということです。
 主人公が何をするのかの軸がぶれていないことは、作品タイトルを力強くします。

●まとめ
 1つめのコツで、作品タイトルには「の」を使うのが良いと書きました。これは「の」を使うことで作品の物語がお客さんに伝わりやすという意味で説明しました。
 2つめのコツは、キャッチーさ。キャッチーであることで、お客さんにスルーされずにひっかかってもらおうというものです。
 3つめのコツは、座を取るタイトルです。
 そしてそれらすべてを、主人公がどのような生き方をしているのかということを匂わせるように使うのです。「主人公がどのような生き方をするか」というのがタイトルから匂ってくるものは、良い作品タイトルと言えます。
 作品タイトルは作品のポテンシャルを引き出すものですから、作品が十分に練りこまれているものであることがとても大切です。作品が企画段階でなかなか良いタイトルが思い浮かばないのはそういう理由なのです。まだ内容がうつっぺらいものですと、タイトルもうすっぺらくなりますので、本来必要な作品の要素が揃っているか客観視しましょう。

 以上、ヒット作となりうる作品タイトルのつけかたでした。

 新作の映画や、新番組アニメもはじまります。ドラマもいろいろあります。作品タイトルは作品のポテンシャルを示すバロメータとも言えますので、どんなタイトルがあるか、どれがヒットするか。新番組などをチェックして動向も探ってみたいですね。

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